検 証
「4カドに実力者がいると荒れる」。出走表の読み方としてよく聞く話は、本当なのか。
10年近くの成績と舟券の回収率を数えると、1コースは確かに負けやすくなる。ただ、荒れ方はほとんど変わらない。4という数字も、特別ではありませんでした。
出走表の4号艇の欄にA1の文字があって、1号艇はB1。こういうレースの予想で、よく使われる言い方があります。
「4カドに実力者がいると荒れる」
A1は、選手の級別の一番上です。
カドは、ダッシュ勢の一番内側。スタートの前に大きく後ろへ下がって助走を付ける外側の組のうち、一番内にいる舟で、スタートで内の3艇より前に出やすいとされる位置です。そこに腕のある選手が入れば、助走の短い内側のスロー勢をまとめて外から抜き去り(まくり)、1号艇は1着を逃す。

本当にそうなるのか。10年近くの成績を数えました。
2016年11月1日から2026年8月11日まで、3,571日分の競走成績で、538,268レース。舟は枠番どおりの位置に並ぶとは限らず、スタート前に内側を奪い合うこともあるため、実際に入ったコースを進入の記録から拾っています。
実力者は、その日の番組表でA1級だった選手。A1の中にも、まくりが得意な人と差し(内の舟が回った隙間を突く勝ち方)が得意な人がいますが、まずは級別のA1を実力者と見なします。4コースにA1が入ったのは、全体の約4分の1でした。
4カドを確かめる記事なのに、どの舟がカドだったかは記録にない。成績のファイルに、スローとダッシュの区別が載っていない。困ったところから始まります。
そこで、この記事では4コースに入った舟を数えます。いつもカドとは限らない位置です。
4コースにA1がいたレースで、1コースの1着率は54.82%。いなかったレースでは54.66%でした。
この0.16ポイントの差(ポイントは率同士の差のこと)は、偶然でも普通に出る大きさ。俗説を確かめに行って、「差は見つからない」という答えを持って帰ってきたことになります。
俗説は外れた、とここで書くこともできる。書かないのは、4コースにA1が入る日には、他にも入っているものがあるからです。
理由は1コースの側にあった。4コースにA1がいたレースでは、1コースにもA1が座っていた割合が48.6%。いなかったレースでは28.2%でした。強い選手が集まる開催では、1コースも4コースも強い。強い1コースと強い4コースが同じレースに入って、差し引きすると、ほぼ帳尻が合っていました。10年分の差が、跡形もなく隠れている。数える側から見ると、ほとんど完全犯罪です。
そこで、比べる相手を揃えました。同じ場、同じ年で、1コースの選手の級別も同じレース同士。その中で、4コースがA1かどうかだけで分けて比べ直します。
揃えた差は、5.4ポイント。4コースにA1がいると、1コースの1着は100レースで5回ほど少なくなる。
偶然では、まず出ない差です。開催日ごとに引き直して200回数え直しても、ほぼ5.1ポイントから5.7ポイントの間に収まります。他のコースにいるA1の数、予選か準優かといったレースの種類、その開催に集まったA1の多さを揃える条件に足しても、差は4.2ポイントから5.7ポイントの間に収まりました。
たまたま何年かが強く出ただけ、ということはないのか。年ごとに分けて、同じ計算をしました。
2017年から2026年まで、どの年も4.3ポイントから6.4ポイント下がっている。2016年は11月と12月だけで数が足りず、図では灰色です。2026年は8月11日まで。
数え方を変えても、向きは変わらない。同じ選手同士で比べても、6艇が枠番どおりに入ったレースに絞っても、出走表の枠番で数え直しても、差はどれも5ポイント以上ありました。同じ選手同士でも、4コースにA1がいる日には勝ちにくくなっていました。
3対3の隊形なら、まくりに来るカドを最初に受けるのは3コースの舟。いわゆるカド受けです。カド受けが張って止めれば、まくりは1コースまで届きにくい。3コースの選手の級別で分けて、比べ直しました。下がる幅は、4コースがA1の時に1コースの1着率が下がる幅です。
| 3コース | レース数 | 下がる幅 |
|---|---|---|
| A級 | 268,748 | 3.6ポイント |
| B級 | 269,159 | 6.6ポイント |
2つの開きは約3ポイントで、偶然では出ない大きさでした。3コースがB級のレースは予選に多いので、レースの種類も揃えて数え直しましたが、開きは同じくらい残ります。数字の向きは、俗説の筋書きどおり。ただ、カド受けが止めたのか、A級の3コースが自分で勝ちを持っていったのかまでは分けていません。
1コースが強ければ、平気なのか。
| 1コース | 普段の1着率 | 下がる幅 |
|---|---|---|
| A1 | 72.5% | 6.1ポイント |
| A2 | 59.8% | 4.9ポイント |
| B1 | 39.9% | 5.2ポイント |
| B2 | 32.4% | 見分けられず |
A1の1コースでも6.1ポイント下がる。平気ではありません。元の1着率から見れば、A1は100回の1着が92回ほどに、B1は87回ほどになる計算。割合で比べると、冒頭のようなB1の1コースの方が崩れ方は大きい。
B2の1コースに4コースのA1が来たのは、この期間で1,831レース。差を見分けるには少なすぎて、出走表で見かけるには多すぎる数です。
級別は、A1かどうかの2択です。出走表には、もっと細かい数字が載っている。選手ごとの全国勝率です。4コースの全国勝率から、1コースの全国勝率を引いて並べました。
| 4コース−1コース | 1コースの1着率 | 4コースの1着率 |
|---|---|---|
| 2.0より多く低い | 70.2% | 3.6% |
| 1.0から2.0低い | 65.1% | 5.8% |
| 0から1.0低い | 58.7% | 8.5% |
| 0から1.0高い | 49.7% | 12.6% |
| 1.0から2.0高い | 38.7% | 19.0% |
| 2.0以上高い | 27.2% | 27.1% |
勝率の差が1.0広がるごとに、1コースの1着率は5ポイントから12ポイントずつ動く。4コースの勝率が2.0以上高いと、1コースと4コースの1着率がほぼ並びます(揃える前の値です)。
A1の中でも、差は大きく違いました。4コースのA1を全国勝率で3つに分けると、下の3分の1(6.43未満)では3.6ポイント、真ん中では5.1ポイント、上の3分の1(6.89以上)では7.8ポイント。A1の文字より、その横の勝率の方が多くを語っています。
では、どのくらいの大きさなのか。
6日間の節なら、1つの場で72レース。4コースにA1が入るのは、そのうち約18レースです。1コースの負けは、1節に約1回増える計算になる。
この差を、同じ場に通って自分の目で見分けようとすると、その場の開催日で約285日。1つの場の開催は年に約192日なので、1年半通い詰める計算です。
それでも、読者が自分の印(◎や○)を動かすかどうかの目安としては、足りる大きさです。この連載では「検証:冬はイン」で、1着率の差が2.0ポイントより小さければ印は動かさない、という目安を置きました。「検証:地元」の1.8ポイントが、印の動かない差だったからです。5.4ポイントは、その目安を大きく超えます。
俗説の後半、「荒れる」の方はどうか。1コースが負けやすくなるのなら、配当も跳ねるはず。3連単の払戻が1万円以上の万舟の割合を、同じように揃えて比べました。
普段の万舟の割合は17.0%。4コースにA1がいると、それが0.8ポイント増える。偶然ではありませんが、小さい差です。4コースにA1がいるレースで、万舟が120レース余りに1レース増えるだけ。
万舟に届かない中穴まで含めて、払戻の中央値(真ん中の値)でも見ました。揃える前の値で、4コースにA1がいるレースは2,650円、いないレースは2,540円。1コースが1着を逃したレースだけに絞っても、5,990円と5,740円です。1コースの負けが増えた割に、配当はほとんど動いていません。
勝った舟の側から見ると、理由が見えてきます。4コースの舟が1着になったレースだけを取り出しました。
勝ったのが4コースのA1なら、払戻の中央値は4,340円。A1でない4コースの舟が勝った時は8,520円で、ほぼ倍でした。
1コースから減った1着が、どこへ行ったのか。同じ揃え方で6コース全部を数えると、4コースが9.0ポイント増え、1コースが5.4、2コースが1.3、3コースが0.9、5コースが1.0、6コースが0.4ポイント減っていました。増えた分は、ほぼ全部4コースのA1本人に行っています。
4コースの実力者は、1コースを倒す。ただ、ほとんど荒らさない。
まくりの方も見ておきます。1コースがまくりで負けたレースで、まくったのが4コースの舟だった割合は、4コースにA1がいると46.0%、いないと26.9%。まくる役は、確かに4コースへ回ってきます。ただ、4コースのA1が勝った22,468レースの決まり手は、A1でない4コースの舟が勝った35,438レースとほとんど変わらず、まくりに偏っているわけではありませんでした。
そもそも、「4カド」の4は効いているのか。同じ揃え方のまま、A1が入ったコースを2から6まで入れ替えて比べました。
2コースのA1なら6.2ポイント、3コースで5.8、4コースで5.4、5コースで4.5、6コースで3.4ポイント。他のコースにいるA1の数を揃えると、2コースから4コースまでは6.0、5.9、5.7とほぼ横並びになります。
4は特別な数字ではなかった。内側の2コースや3コースのA1も、同じくらい1コースを負かしていました。外に行くほど効き目は小さくなり、代わりに万舟が増える。6コースのA1なら、万舟の割合は4.2ポイント増えます。
レースの種類で分けると、差の大きさはまるで違いました。普段の1着率は、4コースにA1がいない時の1コースの1着率です。
| レースの種類 | 普段の1着率 | 下がる幅 |
|---|---|---|
| 予選・一般戦 | 51.7% | 7.1ポイント |
| 選抜・特選など | 61.8% | 2.2ポイント |
| 準優勝戦 | 73.2% | 2.2ポイント |
| 優勝戦 | 66.9% | 見分けられず |
効いているのは、ほとんどが予選と一般戦。選抜や準優勝戦では、差は2.2ポイントまで縮む。ここは読みですが、A1が集まるレースでは相手もA1が多く、4コースのA1だけが抜けて強いわけではないからだと考えられます。
「場による」。4カドの話には、決まってこの一言が付いてくる。24場を1場ずつ、同じ揃え方で数え直しました。
向きは、24場のどこでも同じでした。違うのは強さ。一番大きいびわこで8.0ポイント、一番小さい蒲郡で2.5ポイント、真ん中あたりの平和島で5.4ポイント。ただ、1場だけだと数が少ないので、前後1.4ポイントほどは偶然でも揺れます。
それを差し引いても、場の違いは本物でした。場の違いがないとして1,000回数え直しても、ここまでばらついたことは一度もない。ただ、順番は年によって入れ替わります。前半の5年で1位だったびわこは、後半は10位でした。
場による、は本当でした。分かれるのは「効く場と効かない場」ではなく、「よく効く場と、そこそこ効く場」です。
手がかりになりそうなのは、普段のスタートでした。A1がいない普通のレースで、4コースが1コースより平均でどれだけ遅れてスタートするかを、場ごとに出すと、一番遅れるびわこで0.03秒弱、約0.2艇身。尼崎は逆に、4コースの方が平均0.01秒弱早い。これを場ごとの下がる幅と並べると、こうなる。
普段4コースのスタートが遅れがちな場ほど、4コースにA1がいた時に1コースが崩れる。インの強さやまくりの決まりやすさでも並べてみて、揃ったのはこれだけでした。3つ試した分を割り引いても、偶然でこれほど揃うのは70回に1回ほど。ただ、点は24しかなく、この遅れには場ごとの隊形の癖も入っています。図で一番大きく外れているのは常滑で、理由は記録からは分かりませんでした。
同じ場の中でも、日によって差の大きさは動く。場と年と1コースの級別を揃えたまま、風速と波高で分けた。風が2m以下なら4.8ポイント、3mから4mで5.5、5m以上で6.7ポイント。波も2cm以下で4.8、3cmから5cmで5.8、6cm以上で7.9ポイントと、荒れた水面ほど大きくなります。
風と波は同じ日に重なりやすいので、片方を揃えてもう片方を見直しても、どちらも効いたままだった。水面が難しい日ほど腕の差が出る、とも読めます。ただ、風向きと安定板は分けていないので、向かい風でダッシュが有利になる分が混ざっているかもしれません。
カドが深く引いて、勝負に出る。これも4カドでよく聞く言い方です。どれだけ引いて助走を付けたかは、成績のどこにも書かれていない。残っているのは、各艇がスタートラインを通った瞬間、いわゆるスリットのタイミングだけです。
タイミングを見る限り、4コースのA1は前に出てくる。4コースの舟が1コースより0.05秒以上遅れてスリットを通るのは、普通なら32.0%のレース。4コースがA1だと、それが5.7ポイント減ります。
ただ、前に出てくる分だけで、1コースの負けは説明し切れません。4コースのタイミングが同じくらいだったレース同士で、比べ直しました。表の左は、1コースと比べた4コースのタイミングです。
| 4コースは | レース数 | 下がる幅 |
|---|---|---|
| 0.05秒以上遅い | 163,732 | 1.9ポイント |
| 0.01から0.04秒遅い | 117,929 | 3.1ポイント |
| 同じから0.04秒早い | 133,190 | 5.6ポイント |
| 0.05秒以上早い | 118,349 | 5.5ポイント |
タイミングが同じくらいでも、4コースがA1なら1コースは負けやすい。遅れるほど差は小さくなり、0.05秒以上遅れると1.9ポイント。もっとも、どのくらい遅れるかは、レースが始まるまで分かりません。
目安として全体の5.4ポイントを分けると、タイミングの差で付くのが1.5ポイントほど、スリットの後で付くのが4.0ポイントほど。タイミングを揃えても、差の多くは残ります。深く引いた舟は、タイミングが同じでもスリットを通る時の速さが違うと言われるので、その引きの分がここに入っていてもおかしくない。1マークの回り方も、ここに入ります。記録では、これらを分けられません。
カドは深く引いて勝負に出ているのか。前に出てきているのは確か。ただ、勝負の多くは、タイミングの記録が残る場所より少し先で付いているように見えます。そこから先は、スタンドで見ている人の方が詳しい。
スタンドの外からでも、レースの前に分かることが2つあります。展示タイムと、モーターの2連率。
展示タイムは、効き方を変えていた。4コースの舟の展示タイムがそのレースで1位か2位だと、4コースのA1で下がる幅は6.7ポイント。3位か4位で4.8、5位か6位で4.0ポイント。展示で4コースのA1が速ければ、1コースの印はもう一段動くことになります。
モーターは、効き方を変えませんでした。4コースのモーター2連率が1コースより10ポイント以上高くても低くても、下がる幅は5.3ポイントから6.3ポイントの間。ただ、モーターそのものは効いていて、4コースにA1がいないレースでも、4コースのモーターが10ポイント以上高いと、1コースの1着率は52.0%、10ポイント以上低いと58.4%でした。A1とモーターは、別々に足し算されているように見えます。
ここまでは1着率の話でした。舟券を買う側から見ると、どうなるか。ここからは、レースの前に分かる出走表の枠番で数えます。
まず、1号艇が3着にも入らない、いわゆる「飛ぶ」方。1号艇が3着以内に残る割合は、4号艇がA1のレースでも、そうでないレースでも80.6%で、全体では変わらない。1号艇がB1なら、70.8%が65.5%に下がる。
次に回収率。同じ買い方を100円ずつ続けて、何円戻ってきたかです。4号艇がA1のレースは129,827、そうでないレースは407,343。
| 買い方 | 4号艇A1 | A1なし |
|---|---|---|
| 1号艇の単勝 | 90.0% | 90.8% |
| 4号艇の単勝 | 69.3% | 71.2% |
| 4号艇の複勝 | 80.9% | 77.1% |
これは揃える前の値です。場・年・1号艇の級別を揃えて差を取ると、1号艇の単勝はマイナス0.3ポイント、4号艇の単勝はプラス1.4ポイントで、どちらも偶然の揺れの範囲に収まる。1号艇が崩れやすくなる分は、単勝のオッズにもう入っていると読めます。こちらが10年分を数えて見つけたことを、単勝のオッズの方は先に知っていたようです(10年とは)。
揺れを超えたのは3つです。4号艇の複勝は、揃えるとプラス5.1ポイント。1号艇の複勝はマイナス1.7ポイント。もう1つは風で、4号艇がA1の時に1号艇の単勝の回収率が下がる幅は、風2m以下の日より風5m以上の日の方が5.0ポイント大きい。オッズが追いついていないように見えるところは、この3つだけでした。
もっと外も見ておきます。6号艇がA1だと、6号艇の単勝は49.6%、複勝は66.8%。A1でない6号艇(36.2%、50.7%)よりは高いものの、ここでも100%には届きません。
100%を超えた買い方は、どこにもありませんでした。風の組み合わせは多くの分け方の中から見つけたもので、過去10年の数字です。これからも同じとは限りません。
当たっていたのは、1コースが負けやすくなるところです。5.4ポイント、2017年以降どの年も同じ向き。カド受けがB級の時、予選や一般戦、風や波のある日、4コースのA1の勝率が高い時、展示が速い時に、もっと強く出る。
外れていたのは、荒れるところ。増えた負けの分を取っているのは、4コースの実力者本人でした。万舟が増えるのは、A1がもっと外、6コースにいる時の方です。
それから、4は特別な数字ではなかった。2コースや3コースのA1も、同じくらい1コースを負かしています。
出走表の4号艇の欄にA1の文字を見つけても、配当の桁はほとんど動かない。動くのは、1号艇の印の方です。ただ、その印の分は、単勝のオッズにはもう入っているようです。
集計期間 2016/11/1 から 2026/8/11 / 3,571日・538,268レース
出典:公式サイト 競走成績(Kファイル)・番組表(Bファイル)。この期間の数字は固定で、更新されません。